2024年3月 約8年間に及んだマイナス金利が解除
2024年3月、2016年当時の黒田総裁により導入された「マイナス金利政策」がこの度、遂に解除となりました。
何か月も前からニュース等では「解除秒読み」と煽られていましたが、遂に現実のものとなりました。
政府による働きかけのあった大企業の賃上げが大きな要因と報道されていますが、実際にはこのマイナス金利政策を維持し続けていたのは日本だけでしたので、いち早く正常化したかったというのが本音かもしれません。
しかしここから良くも悪くも「金利のある世界」へと日本は再突入していくこととなります。
「金利がある世界」とは
皆さんが銀行に預けている金利、今までは0.0001%というもはや何の意味もない数字でしたが、早速、預金金利が0.02%と一気に増えましたね。
銀行としては今までお金を預かるだけで発生していたコストが消えた訳ですから、ようやく金利を付けられるようになりました。こうした金利がつくことで皆さんからお預けいただいたお金を貸したり、投資したりすることで銀行は利益を生み出す訳です。これからは預金をどれだけ持っているかが、銀行の収益力に関わってきます。
ですが当然、悪い側面も出てきます。住宅ローンなどの貸し出し金利の上昇です。
ローン等の融資金利の上昇について
金利には一般的に変動金利、固定金利とありますが、日本の住宅ローンの約70%は変動金利です。これは単純に固定金利に比べて安いことがありますが、仮に金利が爆上がりしたとしても、次の5年間は今までの返済額の1.25倍までの返済額までに制限される「125%ルール」が設けられています。
例えば毎月10万円の返済をしている人がいたとしましょう。この方は基本的に5年間は返済額が変わらず、金利が上がって返済額が見直しとなった場合、次の5年間は12万5千円の返済になるということです。
一見、安全そうに見えますが中身をよく見てください。
今まで10万円の返済の内訳は、元金7万円+利息3万円だったところが、金利の上昇により元金5万円+利息5万円となっているのです。
これが12万5千円だった場合、元金5万円+利息7万円となっている可能性もあります。
これでは利息を取られるばかりで元金が全然減りませんので、毎月の返済負担は変わらないとしても最終的な利息支払いは非常に重くなってきます。
実際に金利は上がるのか
こちらについての見解は「変動金利は当分上がらない」です。これには様々な理由があります。
1.マイナス金利解除はあくまでゼロに戻すことであり、金利を上げることではないから
過去に日銀は金利そのもを上げたことがありましたが、00年のITバブル期、06年頃のBRICS投資などが流行していたミニバブル期、0.2%ほど金利が上昇したことがありますが、
いずれも定着せずすぐにゼロ金利へと戻っています。それほどまで金利を上げるということは難しいことで、ゼロ金利の状態が残念ながら日本のスタンダードと言えます。
2.不動産市況の崩壊に繋がりかねないから
バブル期、不動産融資に対する規制を設けたことで土地の値段が上がり続けるという「土地神話」を元にしたバブル経済は終焉を迎え、日本は「失われた30年」に突入しました。
世界を見渡しても08年のアメリカにおけるサブプライムローン問題に端を発するリーマン・ショック、近年の中国における不動産相場の暴落。金利上昇により高額なローンを組んで都心のマンション等を購入している層はダメージを受け、不動産売却の加速に繋がりかねません。そうした場合に起こる不動産相場暴落は、現在の日本に大ダメージを与えることは必至です。
それほどまでに不動産が景気に与える影響は大きいのです。
この不動産相場を崩す金利上昇は現実問題、しばらく出来ないと考えるのが妥当です。
固定金利相場は上昇の可能性有り
逆に固定金利はしばらく上昇する可能性があります。
固定金利は大半が日本の国債の金利を元に作られていますが、今回、日銀はイールドカーブコントロールの廃止も発表しています。
要するに国債の人気が無さすぎて、金利が上昇した際に、今まで日銀はせっせとお金を刷っては国債を自腹で購入し、金利の上昇を防いでいましたが、今回、それがなくなりますので(実際は完全にはなくなりませんが)国債金利≒固定金利も上昇しやすくなっています。
また、不動産業者や銀行も固定金利を勧めるようになるでしょうから、そういった意味でも固定金利は上がっていくと考えられます。
結論
融資金利は引き続き変動金利を選択。万が一、上昇の懸念が出てきた場合は実際に毎月の返済額が何円上がるのかしっかりと見極めましょう。
パーセンテージではなく実額で考えることにより、思ったほどの負担増ではないことがきっとわかると思います。
場合によっては一部繰り上げ返済を行うことで、簡単に返済負担を戻すことも可能となるケースがあります。
実際、あまり怖がる必要は無いです。
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